エゾフクロウのつがいの姿には、多くの人が惹かれます。
どんな特徴があり、どのように求愛や子育てをするのか知りたくなりますよね。
特に求愛給餌や繁殖の様子を知ると、自然の中で生きる夫婦の絆が見えてきます。
この記事では、エゾフクロウ つがいの生態や行動をやさしく解説していきます。
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エゾフクロウのつがいの特徴と見た目のポイント
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求愛行動とは何か具体的に理解できること
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求愛給餌の意味やそのやり方が分かること
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繁殖の流れと一生を共にする関係の深さが理解できること
エゾフクロウのつがいの暮らしを知ろう

エゾフクロウの特徴や見た目

エゾフクロウは、北海道の森にくらす大きなフクロウです。
体の大きさや羽の色を知っておくと、出会ったときに見分けやすくなります。
大きさの目安
特徴 | 数値の目安 |
---|---|
体の長さ | 約50〜60センチ |
翼を広げた長さ | 約90〜110センチ |
体重 | 約600〜800グラム |
メスはオスより少し大きく、体重も重めです。
羽と顔の特徴
羽は茶色に近いまだら模様です。
木の幹や枝にまぎれるので、とても見つけにくいです。
顔は丸く、顔のまわりの羽(顔盤 かおばん)はハートに近い形です。
大きな黒い目は前を向いていて、やさしい表情に見えます。
耳のしくみ
耳は左右で高さが少しちがいます。
そのおかげで、暗い夜でも音の方向を正確に聞き分けられます。
オスとメスのちがい
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メスの方が体がひとまわり大きい
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羽の色はメスの方が少し濃いことがある
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メスは卵を温めるため、巣の中でじっとしている時間が長い
昼間のようす
エゾフクロウは夜行性です。
昼間は木のうろ(樹洞 じゅどう)や太い枝の上で動かずに休んでいます。
観察するときは、静かな森で幹や枝をよく見てみましょう。
双眼鏡があると、顔や羽の模様がはっきり分かります。
エゾフクロウの繁殖と子育て
エゾフクロウは春になると、つがいで子育てを始めます。
オスとメスは役割を分け合い、協力して雛を育てます。
繁殖期の時期と場所
繁殖は春、3月ごろから始まります。
寒さがやわらぐ時期に、巣を使う準備が始まります。
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主に大きな木のうろ(樹洞)を使う
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古い巣箱や切り株の穴を使うこともある
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新しい材料を集めず、ある場所をそのまま利用する
卵と孵化(ふか)
卵は2〜4個産むことが多く、卵の重さは約39〜43グラムとされています。
卵を温める期間(抱卵期)はおよそ30日ほどです。
気温や湿度によって、雛がかえる確率は変わります。
ヒナの成長と巣立ち
雛が生まれると、オスとメスが協力して育てます。
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オスは狩りをして餌を運ぶ
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メスは雛を温めて守る
雛は生まれてから約30日で巣立ちます。
その後もしばらくは親に狩りを教わり、少しずつ独り立ちしていきます。
繁殖の成功にかかわること
繁殖がうまくいくかどうかは、いろいろな条件で変わります。
要因 | 内容 |
---|---|
巣の場所 | 安全で広い樹洞があるかどうか |
餌の量 | 野ネズミなどが十分にいるか |
気温の変化 | 春先の寒さや雨が強すぎないか |
外敵 | カラスやテンなどの天敵が少ないか |
環境省の調査では、釧路湿原のような広い森や湿原では、他の地域よりも巣が多く見られることが分かっています。
このように、エゾフクロウの子育ては自然の条件やつがいの力を合わせることで成り立っています。
つがいで見られる仲むつまじい求愛行動

エゾフクロウは、つがいの絆を強めるために「求愛行動」を行います。
これは子育てを始める前の大切な準備で、いくつかの特徴があります。
鳴き声のやりとり
繁殖期が近づくと、オスとメスは鳴き声で気持ちを伝え合います。
オスは低い声で「ホーホー」と鳴き、メスが応えることがあります。
このやりとりは夕方や夜に多く聞かれ、巣の近くや枝の上で響きます。
繁殖期には鳴き声の回数が増えることも知られています。
巣の準備と整え
巣づくりも求愛行動のひとつです。
オスとメスは一緒に樹洞(じゅどう/木のうろ)を整えます。
入口や中にある落ち葉や羽毛を動かして、卵や雛が安心できる環境をつくります。
このとき、外敵から守れる場所を選ぶことも大切な条件になります。
餌を分け合う求愛給餌
オスが狩りをしてメスに食べ物を運ぶ行動を「求愛給餌」と呼びます。
これは、オスが狩りの力を示すと同時に、巣にこもるメスの栄養を支える役割もあります。
ただし、この行動は繁殖期に限られており、普段の生活では見られません。
経験によって深まる行動
若いペアでは、鳴き声や求愛給餌がまだ不十分なことがあります。
しかし年齢を重ねると、声のやり取りや巣作り、餌の受け渡しが安定して見られるようになります。
経験を積むことで、夫婦の信頼関係はさらに強まっていくのです。
オスが行う求愛給餌とは?

エゾフクロウのオスは、繁殖期になると「求愛給餌(きゅうあいきゅうじ)」という行動をします。
これは、オスが捕まえた獲物をメスに渡す行動のことです。
餌を運ぶオスの役割
オスは夜に森へ出て、野ネズミや小鳥を捕まえます。
捕まえた獲物を巣へ持ち帰り、メスに差し出します。
ただ食べ物を与えるだけではなく、特別な意味があります。
求愛給餌の二つの意味
ひとつ目は、メスの栄養を助けることです。
メスは卵を温めるあいだ、ほとんど巣から出られません。
そこでオスが食べ物を運び、メスの体力を支えます。
ふたつ目は、オスの力をアピールすることです。
「自分は狩りが得意で、家族を支えられる」と示すサインになります。
メスはこの行動を見て、オスを信頼するようになります。
求愛給餌はつがいの信頼関係を深め、繁殖の成功に欠かせない行動なのです。
一生を寄り添う夫婦の絆
エゾフクロウは、一度つがいになると長い間同じパートナーと暮らすことが多い鳥です。
この習性はフクロウの仲間の中でも特徴的で、研究者も注目しています。
役割を分け合う夫婦
繁殖期になると、オスとメスははっきり役割を分けます。
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オスは夜に狩りをして、巣へ餌を運ぶ
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メスは卵や雛を守り、体温を保つ
雛が生まれた後も、オスが獲物を運び、メスがちぎって与えるなど協力します。
この分担があるからこそ、厳しい自然の中で子育てができます。
毎年行われる絆の確認
夫婦の関係は一度結ばれて終わりではありません。
毎年の繁殖期には、求愛給餌や鳴き声のやりとりを通して絆を確かめ直します。
これは「もう一度お互いを選び直す」ような行動だと考えられています。
長く続くペアの強さ
環境が変わったり、外敵に卵を奪われたりして繁殖に失敗する年もあります。
それでも、多くのつがいは同じパートナーと次の年も挑戦します。
長く連れ添うほど、餌を運ぶ回数や子育ての効率が高まり、雛が育つ確率も上がります。
一生を共にする夫婦の絆は、エゾフクロウの生き残りと子育ての大切な力になっています。
森で暮らすエゾフクロウのつがいの魅力

繁殖期に見られるエゾフクロウの姿

春の繁殖期になると、エゾフクロウは普段より活発に行動します。
特にオスの動きが目立ち、観察できる機会も増えます。
鳴き声で存在を知らせる
オスは低く響く「ホーホー」という声を夜によく出します。
この声は縄張りを示すだけでなく、メスへの合図にもなります。
森の中では数百メートル先まで響くため、存在に気づきやすくなります。
巣を整える行動
繁殖期のオスは巣を快適にするため、内部を整えることがあります。
落ち葉や木くずを動かし、卵や雛が安全に育つ環境をつくります。
餌を運び続けるオス
メスが巣にこもっている間、オスは夜ごとに餌を運びます。
特に野ネズミは大切な餌で、1晩に数匹を巣へ届けることもあります。
この献身的な行動は、メスや雛を支えるだけでなく、つがいの結束を深めます。
観察で分かるエゾフクロウの特徴

エゾフクロウを見つけるときは、体の特徴や行動の違いに注目すると分かりやすいです。
双眼鏡を使うと、細かな模様や顔の形までよく観察できます。
鳴き声で見分ける
夜や夕暮れ時に響く「ホーホー」という声は、エゾフクロウ特有の鳴き声です。
オスとメスで声の高さや響き方に少し違いがあり、ペア同士で呼び合う姿も観察されています。
羽毛の模様と顔の形
体の羽は茶色と白のまだら模様になっています。
顔の部分は「顔盤」と呼ばれる丸い形で、ハートに近い輪郭です。
優しい表情に見えるのが特徴です。
オスとメスのちがい
メスのほうが体が少し大きく、羽の模様もやや濃く見えることがあります。
ただし光の加減や見る角度によって差が分かりにくい場合もあります。
昼間の休み場所
エゾフクロウは夜行性なので、昼は木の穴や太い枝でじっとしています。
静かで人の少ない場所を好むため、観察するときは森の奥や風の音がやわらぐ場所を探すと出会いやすくなります。
つがいが見せる行動と求愛行動のちがい

エゾフクロウは、普段のつがいとしての行動と、繁殖期に見られる求愛行動に違いがあります。
それぞれを理解すると、観察のときに見分けやすくなります。
つがいの日常の行動
つがいのフクロウは、普段は静かに暮らしています。
昼間は近くの枝や木の穴で休み、夜になると一緒に行動することが多いです。
同じ縄張りを守りながら、協力して餌場や休む場所を共有しています。
繁殖期の特別な行動
繁殖期になると、オスとメスは特別な行動を見せます。
代表的なのが鳴き声のやり取りです。オスが「ホーホー」と鳴き、メスが応えることがあります。
また、巣を整える行動や、オスが獲物を運んでくる求愛給餌も行われます。
違いを知ることの大切さ
日常の行動は「一緒に過ごす」ことが中心ですが、求愛行動は「繁殖の準備」として現れる点が違います。
この区別を知っていると、森の中で見た行動の意味をより深く理解できるようになります。
一生を共に過ごすフクロウの生態

エゾフクロウは、つがいになると一生を寄り添って暮らすことで知られています。
この習性は、繁殖の成功や種の存続にとても大切な役割を果たしています。
絆を深める夫婦の関係
オスとメスは、一度ペアになると毎年同じ縄張りや巣を使うことがあります。
繁殖期ごとに再び求愛行動や求愛給餌を行い、お互いの絆を確かめ合います。
この繰り返しが夫婦の信頼関係を強め、安定した子育てにつながります。
巣と縄張りを守る生活
つがいは広い森の中で縄張りを持ちます。
巣の場所を長く使い続けることも多く、外敵や他のフクロウから守るために協力します。
巣の確保と維持が繁殖成功率に影響するとされています。
年齢や経験による違い
若いペアは、最初のうちは繁殖がうまくいかないこともあります
。
しかし、年齢を重ねるにつれて求愛行動や子育てが安定し、成功率も高まると考えられています。
経験を積んだペアのほうが有精卵や雛の成長が安定している例が報告されています。
エゾフクロウのつがいは、観察者にとって「自然界の夫婦愛」を象徴する存在でもあります。
長い時間をかけて築かれる絆と、それを支える協力的な生態は、多くの研究者や自然愛好家にとって魅力的な研究対象となっています。
エゾフクロウのつがいから学ぶまとめ
森の中で静かに暮らす彼らの絆や暮らしぶりが、より身近に感じられるようになると嬉しいです。
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エゾフクロウは北海道の広葉樹林や混交林に多く生息している
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体長は約50センチで翼を広げると100センチ前後に達する
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メスの方がオスよりやや大きく体重も重い傾向がある
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羽毛は茶褐色のまだら模様で森の中に溶け込みやすい
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昼間は樹洞や太い枝の影でじっと休む習性がある
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繁殖期は春で3月頃から巣づくりと産卵が始まる
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一度に産む卵は2~4個で抱卵期間は約30日である
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雛は孵化後約1か月で巣立ち親から狩りを学んでいく
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求愛行動には鳴き声のやりとりや巣穴の整備が含まれる
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オスがメスに獲物を与える求愛給餌は繁殖成功の鍵になる
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つがいの関係は一度結ばれると一生続く場合が多い
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繁殖期のオスは鳴き声や行動で活発にメスを支える
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観察時は鳴き声や体格差を手がかりに見分けられる
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つがいの行動と繁殖期特有の求愛行動は区別が必要である
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長年連れ添うことで繁殖の成功率が高まる傾向がある
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