森にすむエゾフクロウは、今すぐ絶滅しそうではありません。
世界の評価は低い心配のランクです。
けれど北海道では、古い大きな木がへったり、人が近づきすぎたりする心配があります。
この記事では、エゾフクロウのくらしと今のようす、守るためにできることをやさしく説明します。
まずは正しい知識を知って、静かに見守りましょう。
-
レッドリストとレッドデータブックの基礎
-
エゾフクロウの生息地と見られる場所の考え方
-
生息数の見方と増減に関わる要因
-
北海道で進む保護と私たちにできる行動
エゾフクロウは絶滅危惧種?現状を知る
出典:もふもふ動物ほっかいどう イメージ北海道に生息するエゾフクロウの特徴
出典:もふもふ動物ほっかいどう イメージエゾフクロウは、北海道の森でくらすフクロウの仲間で、学名は Strix uralensis japonica とされています。
体の大きさはおよそ50センチ、翼を広げると1メートル前後です。
白っぽい羽に細い茶色の縦じまが入り、やわらかな印象の見た目です。
顔の丸い部分は顔盤と呼ばれ、音を集めるお皿のような働きをします。
左右の耳は少し上下にずれていて、音のする方向や距離を立体的にとらえやすい仕組みです。
夜になると活動がさかんになり、風切羽のつくりによって、羽音をほとんど立てずにすっと飛ぶことができます。
主な食べものはネズミの仲間ですが、季節や場所によって小さな鳥や昆虫、両生類をとることもあります。
昼間は木の洞や太い枝で静かに休むことが多く、春から初夏にかけて繁殖期を迎えます。
子育てには古い大木の樹洞がとても大切で、こうした古木を残す取り組みが暮らしをそっと支えます。
エゾフクロウの生息地と分布の広がり
出典:もふもふ動物ほっかいどう イメージエゾフクロウは、広葉樹と針葉樹がまじり合う北海道の森で暮らしています。
平地から山地まで幅広い場所に見られ、神社の森や大きな公園、防風林など、古い木が残る静かな環境でも見つかることがあります。
季節によって見つけやすさは変わり、葉が少ない秋から冬、そして春先は、樹洞や太い枝で休む姿を遠くからでも見つけやすくなります。
夏は葉が茂るため、近くにいても気づきにくいことがあります。
観察マナーの基本
エゾフクロウに出会えたときは、静かに見守る気持ちがいちばんです。
・近づきすぎず、声や物音はひかえめにする
・フラッシュや強いライトは使わない
・巣や雛がいそうな場所には入らない
・遊歩道から外れない、三脚で通路をふさがない
・巣や雛の場所の詳細を広く拡散しない
この小さな配慮が、鳥に余計な負担をかけないことにつながり、地域での観察の機会を長く守ってくれます。
エゾフクロウの「現状」と誤解されやすい点
出典:もふもふ動物ほっかいどう イメージここからは、絶滅危惧種かどうか、国際条約での位置づけ、国内での扱いを、やさしく整理します。
1. 絶滅危惧種ではありません(国際評価は低懸念)
エゾフクロウの基になっているフクロウ(種:Strix uralensis)は、IUCNレッドリストで低懸念(LC)に分類されています。
これは、現時点の世界的な評価では、ただちに絶滅の危険が高いとはされていないことを意味します
(出典:IUCN Red List Ural Owl )
なお、IUCNの評価は原則として「種」単位で行われ、亜種(エゾフクロウ)を個別に評価していない点にも注意が必要です。
2. CITES附属書Ⅱの意味は「取引の管理」
フクロウ(Strix uralensis)はCITES(ワシントン条約)附属書Ⅱに掲載されています。
附属書Ⅱは、絶滅の危険が差し迫っていることを直接示す分類ではありません。
国際取引が野生個体の存続に悪影響を与えないよう、輸出許可などの管理を求めるリストです。
言い換えると、「いま絶滅寸前」ではなく「過度な取引による将来的な悪影響を避けるための監視・管理」が趣旨です
(出典:WWFジャパン)
3. 日本国内での基本的な扱い
日本では、野生の鳥は鳥獣保護管理法の枠組みで守られており、原則として捕獲・飼養はできません。
研究など特別な場合には許可が必要とされています。これは、レッドリストの区分に関わらず、野生の鳥を守るための一般的なルールです
(出典:環境省 鳥獣保護管理法の概要 )。
また、環境省のレッドリストは分類群ごとに順次更新されますが、フクロウ(Strix uralensis)について、日本全体で直ちに絶滅危惧カテゴリーに入っているという位置づけではありません。
評価の版や対象分類群が最新かどうかを合わせて確認すると、誤解を避けられます
生息数と地域ごとの課題をどう見るか
出典:もふもふ動物ほっかいどう イメージ世界全体の評価が低懸念であっても、地域レベルでは注意が必要な場面があります。
たとえば、営巣に使える大きな樹洞のある古木が減ると、子育ての場所が不足しがちになります。
道路沿いでの衝突、繁殖期の過度な接近や撮影の集中など、人の影響が大きい場所では、負担が増えることもあります。
こうした点は、地域のモニタリングや公園・研究機関の報告を重ねて、ゆっくり確かめていくことがすすめられています。
見方のポイントをもう一度、整理します。
| 指標項目 | 見方のポイント | 備考 |
|---|---|---|
| 営巣木の有無 | 大木の樹洞や巣箱の利用状況 | 森林管理とつながる視点 |
| 観察頻度 | 秋〜春先の目撃の推移 | 葉の有無で見え方が変化 |
| 餌環境 | ネズミや昆虫の豊かさ | 積雪や天候の影響あり |
| 人為影響 | 交通事故や撮影圧など | マナーと対策で軽減可能 |
世界的には低懸念という現状を踏まえつつ、地域では「静かに見守る」「古木を残す」「情報の拡散を控える」といった小さな配慮の積み重ねが、これからの姿をやさしく守っていきます。
絶滅危惧ではない現状からエゾフクロウの保護を考える
出典:もふもふ動物ほっかいどう イメージレッドデータブックにおける位置づけ
出典:もふもふ動物ほっかいどう イメージレッドデータブックは、レッドリストに掲載された種や亜種について、生態や分布、脅威の要因を詳しく解説する資料です。
エゾフクロウの暮らしには、樹洞をそだてる古木が欠かせません。
古木が少なくなると、卵を温めたり雛を育てたりする場所が見つけにくくなります。
さらに、道路沿いでの衝突事故や、繁殖期の人の近接、撮影の集中などがストレスになることがあります。
国際的な生態解説でも、フクロウの仲間が森林の連続性や大きな木に強く支えられていることが示されています。
法制度との関係
日本では、実際の保護や規制は鳥獣保護管理法などに基づいて進められます。
野生の鳥の捕獲や飼養は原則禁止と説明され、特別な場合のみ許可が必要とされています
(出典:環境省 鳥獣保護管理法の概要 )
また、フクロウ Strix uralensis は国際取引の規制対象として、CITES附属書Ⅱに含まれます。
観察や情報発信を行うときは、これらの仕組みが野生生物との穏やかな共存を目指していることを思い出し、ていねいな行動を選びたいですね。
エゾフクロウが見られる場所と観察の注意点
出典:もふもふ動物ほっかいどう イメージ出会える場所は、広葉樹と針葉樹がまじり合う静かな森や、古木が残る神社の森、公園、防風林などです。
秋から冬、そして春先は葉が少なく、樹洞や太い枝で休む姿を遠くから見つけやすくなります。
夏は葉にかくれてしまい、近くにいても気づきにくいことがあります。
観察のときは、そっと見守る気持ちがいちばんの基本です。
声や物音はひかえめにし、フラッシュや強いライトは使いません。
遊歩道から外れず、三脚で通路をふさがないようにします。
巣や雛の場所の詳細を広く拡散しないことも、鳥たちの安心につながります。
国内の保護・管理の案内ページには、人と野生生物の距離の取り方がわかりやすくまとめられています
(出典:日本野鳥の会 マナーガイドライン)
北海道の森林保全と生息環境の維持
出典:もふもふ動物ほっかいどう イメージエゾフクロウの子育てを支えるのは、樹洞をはぐくむ古木がまじる、ゆたかな森です。
若い木だけの森では、営巣にちょうどよい洞が足りなくなりがちです。
古木を適切に残しながら森を更新すること、離れた林どうしをつなぐ緑の回廊を確保すること、道路沿いでの衝突対策を整えることが、暮らしの土台をやさしく支えます。
生息地の回復とつながりの再生は、鳥たちの将来を明るくする大切な鍵とされています。
私たちにできること
・観察マナーを守り、静かに短時間で離れる
・地域の森づくりや清掃活動に参加する
・巣や雛の位置情報の拡散を控える
・レッドリストや法制度の基本を学び、最新情報に目を向ける
まとめ|エゾフクロウが絶滅危惧種にならない未来のために
-
北海道の森にくらすフクロウの仲間で樹洞を好む
-
体長は約50センチで翼開長はおよそ1メートル
-
顔盤と左右非対称の耳で音を上手にとらえる
-
主な餌はネズミ類で季節により小鳥や昆虫も食べる
-
夏は見つけにくく秋から春先は観察しやすい
-
古木の減少は営巣場所の不足につながりやすい
-
森の質とつながりが地域ごとの姿を形づくる
-
レッドリストは危険度の評価で法制度とは別枠
-
国内の運用は鳥獣保護管理法などに基づくと説明されている
-
CITES附属書Ⅱで国際取引の規制対象に含まれる
-
静かに見守り短時間で離れる観察がやさしい配慮になる
-
フラッシュや強いライトを使わないのが安心につながる
-
巣や雛の場所の詳細を広く拡散しないことが大切
-
地域の記録を重ね長い目で変化を見ていく姿勢が役に立つ
-
森づくりと交通対策の積み重ねが未来の数を支えていく

